コロナ禍となってはや2年以上が経過しました。コロナウィルスの感染拡大に伴い、至る所で人々の生活の様式に変化が生じ、この2年、時代の流れは更に加速しているようにも感じられます。

 そのような中でも、人々はコロナとの共存を模索しながら、元の生活を取り戻そうとさまざまな取り組みが行われています。しかし、その心の奥底に未知なるウイルスに対する警戒心がある以上、無意識の内に外出を減らそう、他人との接触を遠慮しておこう、という方向になってしまうのはある程度致し方ないことなのかも知れません。
 お客さまの中にもこのご時勢、演奏会に行くことが心配な方がいらして当然かと思いますが、東京室内管弦楽団では常に出演者やスタッフの健康管理と体調チェックをしっかりと行い、ホールの座席の配置や感染対策等も最大限の対策を施しながら、皆さまが安心して音楽に心を委ねられる環境作りを日々行っています。

 「求められる音楽を」というスローガンを掲げ活動している東京室内管弦楽団が特に力を入れている事業の一つに、小中学生を中心とした若い世代の方々によりよい音楽をお届けする、という音楽鑑賞教室があります。しかしこれらは、各学校の状況や感染状況などによっても、多くの場合未だ音楽会を再開できていないという現状です。致し方ない側面もあることながら、とても歯痒く残念なことです。

 音楽家に限ったことではなく、何かを表現したり伝えたいと思った人間において、マスクありきの生活は、口を塞がれていることでその意欲やエネルギーが大なり小なり削がれているのではないでしょうか。ですから、物心ついた頃よりマスクをすることが当たり前だった今の子供たちの感情表現の仕方に、これから歪みが生じないだろうか、という気掛かりを私は常に感じています。

 しかしこのような時代であるからこそ、人間の健やかな情操を育むといわれる生の楽器の音、その集合体としてのアンサンブルやオーケストラの響きこそが、今本当に必要とされているものなのではないかと思うのです。アンサンブルやオーケストラといった「合奏」は、オンラインやリモートでは絶対にできないものです。アコースティックの楽器で奏でられる音は、空気を伝って聴く人の耳に直接届き鼓膜を震わせる。ここには電気的な介在は一切なく、これらの楽器の音色は、じかに耳に届くことで人間の肉体と精神によい働きを与えるとも聞きました。

 私たち東京室内管弦楽団の紡ぎ出す響きが、今こそ世の中の方々の心と身体の健康に役立ちたいと願っています。この秋からのシーズンも、バラエティ豊かな内容と、魅力溢れる生の音をお届けしたいと思い、スタッフ一同知恵を絞り、アイディアを持ち寄り考えて参りました。前提としてそこには常にステージに立つ演奏者の感情のほとばしりや煌めきがあるのです。生演奏の素晴らしさを一人でも多くの皆さまにお伝えしたい!

 東京室内管弦楽団の2022年この秋冬シーズンからのご案内に際し、プリンシパルコンダクター、また理事としての私の方からご挨拶させていただきました。一人でも多くの皆さまからのご理解とご支援をこれからも賜りたく、引き続きこれからも応援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
 
 
 
2022年9月吉日
東京室内管弦楽団プリンシパルコンダクター
橘直貴