鳥栖の皆さんならば恐らくご存知であろう映画「月光の夏」。
この映画に出てくるフッペル社のピアノは、現在も大切にサンメッセ鳥栖の1階ロビーに保管、展示されています。
太平洋戦争末期、今生の別れとしてフッペルのピアノを弾いて出征して行かれた若き特攻隊員たちのエピソード。
悲惨な戦争を2度と繰り返すまいと願う平和の象徴として、鳥栖のフッペルのピアノは物語と共に語り継がれます。やがて、その名を冠したピアノコンクールを鳥栖で開催しようと働きかけた地元の方々の発想、織りなす歴史の結晶としてフッペル鳥栖ピアノコンクールがあります。ここから世界に羽ばたく優秀な若いピアニストが毎年出ていること、特に昨今水準の向上著しいこのコンクールで優秀な成績をおさめたピアニストのお披露目の場として、私たち「コンセール・エクラタン福岡」が共演させていただいていることに深い意義とありがたいご縁を感じます。たった今皆さまがお手にされて、読んで下さっているこのチラシがそのコンサートのご案内です。
毎年コンサートが近づくと鳥栖に赴き、長い長い歴史の道のりに思いを馳せる度に、私には鳥栖への愛情とリスペクトが深まるのです。戦後80年という節目の今年、若手ピアニストの発掘や育成ということだけではなく、平和な世の中であるからこそ音楽ができて楽しめるということへの感謝、これらのことは多くの日本人の犠牲と努力の上に成り立っていることを思い返すよい機会ではないでしょうか?
世界の平和を望むと共に、フッペル鳥栖ピアノコンクールが未来永劫続いていくことを心より願っています。
2025年8月11日
指揮者 橘直貴