マンドリンスーパーユースオーケストラ(仮称)設立に向けて

 マンドリン、それと同じ発音形態を持つマンドリン属の楽器は、脇に抱えた楽器を右手に持ったピックというもので弦を弾く、いわゆる撥弦楽器と呼ばれるものです。ピックを通して弦を捉え、感じ、弾く圧やスピードで音色を多彩に変化させることができるというその発想は、鍵盤楽器に例えていうならばピアノというよりはチェンバロに近い、繊細で美しい音のする楽器たちです。

 これらの楽器を愛好する人たちは、もちろんその楽器の魅力の虜となっていますが、このマンドリンとマンドリン属の楽器による合奏形態、つまりマンドリンオーケストラは、一つの演奏形態として音楽ファンの間に確固たる市民権を得ているかというと、残念ながら必ずしもそうではないように私には思われます。

 その理由は幾つか考えられます。マンドリンの演奏法が一つのメソードとして体系化されていないため、マンドリン音楽教育の現場に携わる教師の奏法や、時には音楽性に大きな隔たりがあり、そのことが教師同士の敵対心や排他的な感情を生んでいること。素晴らしいプロフェッショナルの演奏家は世の中にはいるものの、それらの方々が合奏をする機会があまりないことなどが、理由として挙げられるのではないでしょうか。

 プロフェッショナルの演奏家たちが活躍する現場が更に広がることで、それに接した若い人たちが、マンドリンや合奏を頑張りたいと夢見て、自分もあのようにやってみたい、なってみたいという目標を持つことができる環境をまず作ることが、マンドリン音楽教育の現場を充実させる上で必要不可欠でありましょう。

 子供たち、若い人たちが演奏法、音楽性についての一定水準の技術と知識を学び合奏に参加すること、その中から将来演奏家を目指す人や、教育の現場に携わっていく人が輩出されていくこと。その演奏家や指導者のもとで、次の若い人たちが更なるマンドリン音楽、合奏の素晴らしさ、楽しさに触れることができるという好循環を生み出すことが大切です。

 上述した理由や経緯を踏まえて、マンドリンの世界における、スーパーユースオーケストラ(仮称)の設立について、提言をさせていただきます。スーパーユースオーケストラ(仮称)を通して若い人たちがマンドリン属、ギターといった楽器の素晴らしさに触れること。そして、学ぶことは楽しいということを実感してもらう、そのためにも指導者と指揮者が幅広く情報交換を重ねつつ、また、互いに手を取り合いながら、切磋琢磨していくことも必要と感じます。

 以上の点を要約し、スーパーユースオーケストラ(仮称)設立にあたってのその理念を端的に提示するならば、指導者や指揮者が協力し合うということを前提とし、

 ①演奏における一定以上の技術と音楽性を持たせて
  マンドリン合奏の更なるレヴェルの底上げをはかること

 ②マンドリン合奏を通して将来的に専門家を輩出していける土壌をつくること

 ③結果として、マンドリン属、ギターの楽器の素晴らしさに触れる人が一人でも増え、
  世の中に広めていけるという好循環を作ること

 以上の点に共感して下さる方のご理解とご協力を求め、何よりもこのような活動が日本国内において始まりつつあることを、ご報告申し上げる次第であります。

 2016年10月1日
 指揮者  橘直貴