「ムジカ・クラシカ・T」から、「フィラルモニカ・マンドリーニ・アルバ・サッポロ」に改称して、3度目の演奏会を迎えます。名称を変更した背景には、以前の名前の「T」は私のイニシャルを表していたこともあり、より公共性の高い楽団になるべきだという考えによるものです。また地名を入れることによって、どこの土地に根ざした活動をしていく集団なのかということを明確にするという目的によるものです。

 指揮者として演奏者の前に立ち、よりよい音楽を作るべく最善を尽くす、そこをないがしろにする積りは毛頭ありません。しかし指揮者の別の存在意義として、個々の演奏者や人の思い、存在だけならばその力は小さくとも、時に皆さんの情熱を一つの大きな渦に変えていくという仕事も私の大切な仕事の一つではないかと、数年前から考えるようになりました。

 では私がこのマンドリンオーケストラの世界で何ができるのか、ということを考えてきて、マンドリン属の楽器、そしてギターの子供たちを対象にしたオーケストラを作ろうと考えております。シンフォニーオーケストラならば各地にジュニアオーケストラなるものが存在し、そこで質の高い指導が意欲ある子供たちに提供され、そこからプロフェッショナルを目指す子供たちが音大に上がってゆくという仕組みがありますが、マンドリンオーケストラには、残念ながらまだそのような流れが確立されておりません。実際にこのようなマンドリンオーケストラのジュニア版は、全国的にあまり例がないようです。

 私が各地でマンドリン音楽に携わる方々とご一緒させていただく中で、明確なビジョンを持った方々が各地で魅力的な活動をされているなど、新たな胎動が確実に生まれつつあるのを感じますし、そのための人材も私の周囲には集まり始めている。そんな実感が今、私の背中を押そうとしています。その証拠に、今回もコンサートマスターの柴田高明さんをはじめ、素晴らしい仲間の方々が関西、関東から駆け付けてくれています。このことは本当にありがたいことです。

 マンドリンオーケストラは、何だかマイナーで暗い、みたいなイメージをお持ちの方がいらしたらそれは間違いであり、マンドリンオーケストラの作品もよいとものだと感じていただくためにも、個々の奏者の技量がより高くなり、結果マンドリンオーケストラの演奏のクオリティが更に高まること、そして、魅力ある楽団のためにより素晴らしい作品が書かれること、この循環が必要なのではないかと考えます。

 マンドリン音楽は、たまたまバッハ、ベートーヴェン、ブラームスなどという道筋を取らなかっただけのこと。このことを詳しく書きますと、日本のクラシック音楽受容史の話になってしまいますので機会を改めることにして、私はこれまで札幌のマンドリニストやギタリストの皆さんと共に育ってきました。

 そして今、マンドリンオーケストラ専業の指揮者を除けば、私はマンドリンオーケストラの素晴らしさや魅力を日本で一番理解している指揮者の一人ではないかと思います。これからは、マンドリン界に何らかの恩返しをしていきたいと考えております。子供たちを対象とするオーケストラのお話など、ご興味を感じられた方は、是非一度私にご連絡をいただけたらと思います。チームを組んで動くことの大切さを感じます。そして、今後とも惜しみない応援をお願い申し上げる次第であります。

 本日もようこそお越し下さいました。最後までごゆっくりお聴き下さい。

 2016年3月6日
 指揮者 橘直貴