(東京室内管弦楽団プリンシパルコンダクター)
 橘直貴よりご挨拶

 
 
 この度は、東京室内管弦楽団の公演事業の案内をご覧いただき、誠にありがとうございます。
 当団は<求められる演奏活動>を理念として活動する中で2023年に95周年を迎えます。楽団のその長い道のりの中で多くの聴衆の皆様、サポーターの方々に支えられて活動を続けることができました。この場をお借りして心より深く感謝申し上げる次第です。

 
 しかしそのような中、ここ数年続く新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特にオーケストラを含めた文化芸術団体全体が大きな被害を受けました。当団も決して例外ではなく公演が次々と中止、延期になってしまう中で一時は全く演奏活動ができず、私たちとしてもとても忸怩たる思いを感じる日々の連続でした。
 
 
 今回もこのようなご案内をお送りするにあたり、お客様のコロナウィルス感染に対する不安が未だ完全に払拭されることのないこの状況下、私たちの演奏と公演事業に対し皆様が何を期待されていらっしゃるのかについての協議を重ねて参りました。動画配信サービス等で音楽を手軽に聴けるという時代の大きな変化の中、逆にどのように生演奏の素晴らしさをお届けできるのか、そしてその真の価値は何なのかなど、さまざまな意見が飛び交う中で私たちの使命は、ホールや施設それぞれの会場に足を運んできてくださるお客様のために全力を尽くし、主催者の皆様のご希望や思いに寄り添うこと。且つ、録音や動画配信サービスでは決して感じることのできない、プロフェッショナルの演奏家による緊張感あふれる会場の空気感、立体感のある華やぎに満ちた演奏と、会場に来たお客様にしか感じることのできない感動的な演奏をお届けすることだと思い至りました。私たちの演奏により生きていく勇気と高揚感を少しでもお届けできたらと願います。ネットやスマートフォンを使って手軽に音楽が聴ける今だからこそ、逆により多くの人にライブの素晴らしさを味わってもらいたいのです。
 
 
 2021年のAutumnシーズンコンサートの際にお客様に向けてご挨拶をさせて頂いた際、その文章の中で私は次のように訴えました。「同じ空間にいる演奏者が奏でる音、その振動が聴く人の鼓膜や骨を直接震わせ、それが脳や心に響いていく、それが音楽を聴く上で最も大切なことであり、それを最大限に感じられるのはやはり生演奏に他ならない」と……。会場で聴く音楽の良さを実感してもらいたい、東京室内管弦楽団が<新しい感動と出会えるオーケストラ>と銘打って活動しているように、主催者様とお客様が新しい感覚を発見できる、そしてこれまでの常識を覆し、新たな感性の引き出しを増やすことのできるような公演の数々を、ご担当者様全ての皆様と創り上げて参りたいという思いによりこのご案内をお手元に送付させていただきましたので、何卒ご高覧いただけましたら幸いに存じます。
 
 
 是非お客様のためにも、素敵な時間を創るためのお手伝いをさせてください。
 最後になりますが、今後も皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。

 
   
 2022年 吉日 
 東京室内管弦楽団プリンシパルコンダクター
 橘 直貴